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流通・物流関連分野


  1. 成長が期待される産業の将来像
     今後の流通・物流分野は、規制緩和を前提として、より効率的な事業者の新規参入と事業拡大により市場が活性化すると共に、多様化していくニーズに対応して、インターネット通販やサードパーティロジスティクス(荷主に対して物流改革を提案し、包括して物流業務を受託する業務)など新たな業態・サービスの開拓により市場が拡大していく。この過程では、情報化・機械化、製販連携などによって効率を高めた小売業や、構造変化に対応した卸売業がそのウェイトを高めていくことが見込まれる。

  2. 雇用規模・市場規模予測
      現  状 2010年
    雇用規模予測 約49万人 145万人程度
    市場規模予測 約36兆円 132兆円程度

    (注)左記の計算は、技術進歩による生産性の推移如何等により変動しうるものであり、幅をも って見るべきである。



  3. 産業発展の課題と政策の基本的方向

    [産業発展の課題]

    1.  効率的な事業者の新規参入・事業拡大やニーズの多様化に対応した新規業態・サービスの開拓等を制約する規制が存在している。
    2.  商取引に必要な情報の共有・相互交換の不十分によるデータの未活用、重複入力等、商取引データのモデル化・標準化の遅れが業務の効率化の阻害要因となったり、情報化の遅れが業務の属人化や輸送の非効率を招いている例がある。
    3.  物流に関する社会資本の整備の遅れや相互連携の不足等が道路の慢性的な渋滞や我が国国際港湾のアジアにおける地位の低下等を招いているなど、現時点では効率的な物流体系の構築が図られていない状況にある。また、流通分野では大規模小売店舗の郊外展開の加速化等による中心市街地の商業機能の低下等が生じている。
    4.  過度の多頻度小口配送や極端にリードタイムの短い発注等の商慣行が、労働時間の短縮や流通・物流効率化の阻害要因となる等の社会的非効率を招いている例がある。

    [政策の基本的方向]

    1.  流通分野について需給調整等基準の見直しを行いつつ、物流分野については、必要な環境・条件整備の措置を講じつつ、原則としておおむね平成11年度〜平成13年度を目標期限として需給調整規制を廃止するとともに安全規制の見直しを行う等、規制緩和の推進を図り、新規参入やサービスの多様化を促し、市場を活性化させる。
    2.  EDI化等を通じて商取引全般及び物流業務全般の電子化・ネットワーク化を推進し、流通・物流に係る業務の効率化・高度化を実現するとともに、道路交通に関する情報化など輸送効率向上のための情報化を進め、効率的な物流体系を実現する。
    3.  物流に係る社会資本については、道路、鉄道、港湾、空港、物流拠点の相互連携、ボトルネックの解消、国際ハブ港湾・ハブ空港の整備の3分野について重点的かつ効率的な整備を進め、効率的な物流体系を構築する。また、関係省庁連携により、中心市街地における面的広がりを持った商業の振興等を図るための総合的な対策を検討する。
    4.  物流コストの明確化等を通じて価格メカニズムが有効に機能しうる環境の整備を進めるとともに、ECR、QR等情報化を軸とした企業間連携の推進等により、効率的な商取引活動への誘導を図る。

  4. 総合的な施策パッケージ
     流通・物流分野が発展していくためには、効率的な事業者の新規参入や事業拡大による市場の活性化、ニーズの多様化に対応する新規業態・サービスの開拓による市場の拡大、情報化・機械化等による一層の効率化等により付加価値を高めていくことが必要である。
     このため、安全性の確保、事業者への影響等を配慮しつつ、新規参入や新規事業開拓、輸送の効率化等の障害となる諸規制の緩和、製販連携等の流通業・物流業の一層の効率化・高付加価値化や物流業の機械化・省力化等を実現するための情報化・技術開発の推進、交通機関相互の連携を図りつつ効率的な輸送体系を実現するためのインフラの整備、流通・物流の効率化の障害や参入障壁となるような取引慣行の是正、労働資源の活用を妨げている諸制度の見直しや労働力の高齢化等への対応が重要な政策課題となる。
     特に物流関連分野においては、平成9年4月4日に閣議決定した「総合物流施策大綱」に基づき、関係省庁が連携して物流施策の総合的な推進を図る。
     この他、商業機能等の空洞化が進行している中心市街地について、その活性化のための関係省庁の連携による総合的な対策を検討し、商業集積の面的な展開による魅力の向上の推進等を図る。
    <規制緩和>
     流通・物流分野では、技術革新とニーズ変化を捉えた相次ぐ新規参入と事業拡大が市場を活性化し、新規業態・サービスの開発が産業の付加価値を高めていくことが期待される。このような観点から、安全性の確保、事業者への影響等を配慮しつつ、新規参入を制限しサービス内容及びその価格を制約している規制を引き続き見直し、業種業態の垣根を取り払うとともに、サービス・価格の多様化を促していく。
    ○行動計画
    • 大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律については、規制緩和推進計画の中で平成9年度に制度の見直しを行うことが閣議決定されているところ、産業構造審議会及び中小企業政策審議会の合同会議を5月から開催し、消費者、小売業者、学識経験者等各界の多様な意見を踏まえつつ、法的措置を含めた抜本的な検討を行い、平成9年12月までに結論を得た上で、所要の措置を速やかに講じる。
    • 製造たばこの小売販売業の許可制について、平成9年度中に需給調整を含めた基準の見直しを行う。
    • 酒類販売免許制の在り方について、需給調整要件の必要性の有無、酒類についての社会的規制の在り方を含めた幅広い観点から、中央酒類審議会において検討を進め、平成9年度中に報告を得る。
    • 医薬品のうち人体に対する作用が比較的緩和で、販売業者による情報提供の努力義務を課すまでもないものについて、薬事法の許可を受けた販売業以外の一般小売店においても販売できるよう、医薬品のカテゴリーを見直すこととし、平成9年度に具体的な方針の検討、決定及び公表を行い、平成10年度に速やかに実施する。
    〔トラック事業〕
    • トラック事業の運賃・料金規制については、平成9年3月の規制緩和推進計画に従い検討を行い、その検討結果を踏まえ必要な措置を講ずる。
    • 分割不可能な重量物を輸送する基準緩和車両の回送時における関係法令の基準内の輸送に関する規制緩和等、トラック輸送の効率化に資する規制緩和について、平成9年度中に安全性の確保も十分に考慮しながら検討を行い、その検討結果を踏まえ平成10年度に必要な措置を講ずる。
    • 道路の整備状況に応じ、高速自動車国道等における特殊車両の通行許可の限度重量の引上げを行う。
    • トラック等の検査証の有効期間については、平成9年度に集中的に調査を実施し、その結果、安全確保、公害防止の面で支障がない場合には延長する。
    〔海上運送〕
    • 貨物フェリーに係る需給調整規制については、国内旅客船事業に係る需給調整規制の廃止の時期に併せて廃止する。
    • 内航タンカー運賃協定及び内航ケミカルタンカー運賃協定を平成10年度末までに廃止する。
    • 日本人船長・機関長2名配乗体制については、海運造船合理化審議会において、日本人船員の確保策等と併せて審議されており、その結果を踏まえて早急に所要の対応をする。
    • 水先問題検討会において強制水先の必要な範囲を見直し、結論を得る。

    〔航空運送〕

    • 国内航空運送事業に係る需給調整規制について、以下の方策を確立した上で、平成11年度に廃止する。
       1)
      空港制約のある空港における発着枠配分ルールを確立する。
       2)
      既存の発着枠の流動化を図ることの可能性を検討し、早期に結論を得る。
       3)
      新規発着枠について有効期限制を導入する。
    • この他、物流関連分野の規制緩和については、平成9年4月4日閣議決定の「総合物流施策大綱」に基づき措置を講ずる。
    <情報化の推進>
     流通分野は、情報化が比較的進んだ分野であり、さらに近年は情報化を軸とした企業間連携で効率化を図っている例が見られる。一方で、商取引データの共有と相互交換が十分になされず、データの未活用、重複入力、再変換等の非効率も見られる。
     物流分野は、情報化が十分に進んでおらず、機械化への対応困難、紙による受発注、重複検品等の非効率が見られる。
     今後は、広範な事業者がより高度な分野で情報通信技術を活用していくため、商品属性、ビジネスプロセス等の商取引データのモデル化・標準化やインターフェースのオープン化等を図り、オープンネットワーク等を活用したデータの共有と相互交換を可能とするなど情報化を一層推進し、情報コストを低減させる。
     また、道路・交通・車両分野の情報化を推進し、道路交通情報の提供等により、輸送効率の向上を図る。
    ○行動計画
    • 現在、流通業におけるEDIは、受発注を中心に行われているが、平成8年度に開発した流通EDI標準メッセージの普及により、さらなる効率化を図るとともに、商品情報から請求・支払に至るまでの商取引業務全般へのEDI化を促進させる。併せて製販の企業連携の強化によるECR、QR等の実現に向けて、情報通信基盤整備のための情報システムの開発及び実証実験を平成9年度中に実施し、普及を図る。
    • 企業間、企業内における情報共有及び交換の促進を図るため、商取引に関する情報のモデル化、標準化の検討を行う。
    • 中小企業の社内の情報化を通じた生産性向上に資するため、業種・業態毎の業務特性に応じた安価な業務アプリケーションの開発・普及を行うとともに、受発注、販売管理、在庫管理等の業務を情報化するために必要な中小小売業の商品情報のデータベースの整備・普及を図るなど、中小企業における情報化の促進のための環境整備を図る。
    • 流通分野におけるインターネット等を利用した商取引を促進するため、必要となるシステム開発や実証実験等の施策を推進する。
       1)
      インターネット上でのソフトウェアや情報等の販売について、その著作権管理や効率的な受注、配送、代金回収のためのシステム開発や実証実験等、流通分野のインターネットを利用した商取引推進のための施策を講ずる。
       2)
      食品の在宅取引システムを実現するため、地域の食品小売業がインターネット等を利用して共同で受注、配送、代金決済を行うシステムの開発及び実験事業に関する所要の施策を講ずる。
    • この他、物流関連分野の情報化については、平成9年4月4日閣議決定の「総合物流施策大綱」に基づき施策を講ずる。
    <社会資本整備>
     道路、港湾、鉄道、空港等の物流に関連した社会資本については、例えば、道路の慢性的な渋滞、港湾等の国際競争力の低下等にみられるように、現時点においては効率的なヒトとモノの流れの観点から、必ずしも十分に機能しているとは言い難い状況にある。
     今後は、国内外の輸送量の拡大に配慮しつつ、陸海空の各交通機関の特性を生かし、かつ相互の連携を強化して、物流コストの削減を図るとともに、運輸分野の消費エネルギーの抑制を図る。また、投資の健全性の確保に留意しつつ、各種施策の整合性の確保を図ることによる建設コストの低減、効率的・効果的な整備に努めるとともに、施設の利便性を改善して稼働率を高めること、既存ストックの有効活用及び投資の重点化等により公共投資の効率化を図る。
     また、民間活力の活用、コスト縮減、利便性の向上等の観点から、社会資本が民間企業主体によっても整備可能となるための条件、手法及び資金調達環境並びにそれらの適用分野についての検討を行う。
     さらに、物流の高度化・共同化や商業集積に資するという観点から、関連の公共施設や物流基盤施設等を整備する。
    ○行動計画
    • 地域の商業振興及び活性化を図るため、21世紀活力圏創造事業として行う生活基盤・産業基盤施設の一体的な整備による商店街、商業集積の整備を支援する。
    • 食品流通の構造改善の一層の推進に資するよう、食品商業集積施設に付帯する施設等食品流通構造改善基盤施設の整備を進める。
    • この他、物流関連分野の社会資本整備については、平成9年4月4日閣議決定の「総合物流施策大綱」に基づき施策を講ずる。
    <取引慣行の是正>
     流通分野では、小売のマーチャンダイジング(市場調査に基づく合理的な販売促進策)能力を弱めたり、結果的に小売価格を引き上げる可能性のある取引慣行が見られる。
     物流分野では、過度の多頻度小口配送や著しくリードタイムの短い発注等、労働時間短縮の阻害要因となったり、物流合理化の阻害要因になる等の社会的非効率を招いている慣行が見られる。
     また、事業の近代化を阻害したり、新規参入を抑制し、競争制限的に作用している慣行も見られる。
     今後は、情報化の促進に加え、商慣行改善指針の普及、ECR・QR・製販連携の推奨、物流コスト負担の明確化・適正化等を通じて取引慣行を改善して流通・物流の効率化を進めるとともに、競争制限的な機能を果たしている民間慣行を取り除いていくため、独占禁止法の厳格な運用を行う。
    ○行動計画
    • 内外価格差が大きい素材・中間財を中心に商慣行実態調査を行い、問題があると認められる場合にはその改善を促していく。
    • 物流合理化ガイドラインのフォローアップ結果に基づき、同ガイドラインの改定等必要な措置を講ずる。
    • 物流コスト算定活用マニュアルの普及に向けて、平成9年度中に、同マニュアルに沿った物流コスト調査を行い、その結果を公表する。
    • 一貫パレチゼーションの普及促進に向けて、平成9年度中に、一貫パレチゼーション普及調査を実施し、その結果を公表することにより事業者の取組を促していく。
    • ECR、QR等のサプライチェーンマネジメント(商慣行の見直し、電子商取引の推進や取引単位の標準化などによる企業間連携を通じて消費から生産までの情報と物の流れを効率化することで、消費者ニーズを反映した商品をスピーディーに適正な価格で提供する仕組み)に係る技術開発及び実証実験を進めて、流通業の効率化を推進する。
    • この他、物流関連分野の取引慣行の是正については、平成9年4月4日閣議決定の「総合物流施策大綱」に基づき施策を講ずる。
    <人材育成>
     流通分野では、女性パートタイム労働者に依存しているが、これらの多くが就労調整を行っており、年末には労働供給の障害になっている場合も見られる。
     物流分野では、労働力の高齢化が見られ、作業効率の低下と賃金負担の上昇が懸念される。
     今後は、生産年齢人口の割合が低下していくことから、就労意欲を阻害し、労働力資源の活用を妨げている諸制度の見直しを行うとともに、高齢者や非熟練労働力でも就労できるよう情報化・機械化を促進する。
    ○行動計画
    • 「流通業務市街地の整備に関する法律(流市法)」や「民間事業者の能力の活用による特定施設の整備に関する法律(民活法)」及び「中小企業流通業務効率化促進法(物流効率化法)」等による民間事業者の流通・物流効率化・高度化施設の導入に対する支援を引き続き行い、流通・物流分野の情報化・機械化の促進を図る。

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