プロジェクト
 東京湾アクアライン(東京湾横断道路)



 

事業事後評価 中間報告 概要


1.事業を巡る社会経済情勢の変化

<事業概要と経緯>

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東京湾アクアラインは、東京湾のほぼ中央を横断し、神奈川県川崎市と千葉県木更津市を結ぶ延長15.1kmの一般有料道路
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東京湾開発構想が昭和30年代に各層、各方面から発表される中、昭和41年より建設省により調査開始。調査の進展に合わせて事業着手への気運が高まり、各種計画での位置付け、国会の審議を経て昭和61年?東京湾横断道路の建設に関する特別措置法?成立。
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昭和62年建設大臣から日本道路公団への事業許可、日本道路公団と東京湾横断道路(株)との建設協定締結を経て事業化、平成元年工事着工後、我が国建設技術の粋を集めて困難な条件を克服。平成9年12月開通。

<社会経済情勢の変化>
日本経済

事業期間は我が国社会経済情勢の大きな変化の時期。事業着手時の円高不況から民活による内需拡大と平成景気、そしてバブル崩壊を経て、特に平成9、10年はオイルショックを上回る急激な景気低迷時期。
地域経済

1都3県でも大きく変化。周辺における各種開発計画の遅延や規模の変更が生じる
想定と現在の比較

事業着手時に想定された社会に比べ総人口は約99%とほぼ想定に近いのに対し、経済成長が平成4年度ころからかい離し、平成9、10年度でその差がさらに拡大して、平成10年度の想定に対してGDPで約76%に低迷。
事業計画の変遷

当初計画では昭和62年に総事業費約11,500億円、普通車の通行料金4,900円、供用初年度交通量約33,000台/日、償還期間30年を見込んで開始。これまでに例をみない大規模海洋土木工事であり、各種検討や工事の進捗などに応じて事業計画を見直しながら進められ、最終的に供用を控えた平成9年に事業費を精算し約14,400億円、普通車の通行料金4,900円(ただし、供用後5年間4,000円)、供用初年度交通量約25,000台/日、償還期間40年と変更された。




図 実質GDPと想定との比較
2.事業の効果

<効果の発現状況>


道路利用


大幅な時間と距離の短縮を実現。しかし開通からの実績交通量(約1万台/日)は供用初年度計画交通量の約4割。物流面での利用は低調だが、バス利用が多く人の流れは約4万人/日と好調。既存の京葉道路や東関道の代替路として首都圏の南回り??????の役割も果たしつつあるがまだ不十分。
住民生活

ライフラインの収容空間、災害時の代替路として住民生活を支える。路線バスが約100便/日と新たな公共交通機関として定着。房総地域の人口に大きな動きはない。
地域経済

平成10年の君津、安房地区の観光入込み客数が対前年比10%以上伸びており、観光面で大きな効果。休憩施設「海ほたる」が観光需要を喚起。
公共部門

地価、税収等へのアクアラインの影響を現時点で抽出することは困難。
収支状況

実績交通量の低迷もあり、平成10年度は収入148億円に対し、管理費56億円、金利412億円と金利負担が大きい状況。

<利用低迷の要因>
? 第1次オイルショックを上回る急激な景気の後退時期の下での、全体的な交通需要の低迷や、料金の割高感、周辺開発の遅れ、関連道路網の整備の遅れ等の影響等が要因として考えられる。

<評価>
? 首都圏の南回りバイパスとして、道路利用、住民生活等の面で効果を発揮。
? しかし、我が国全体のかつてない厳しい景気低迷の中で効果の発現は不十分。
? 巨大な社会基盤施設の効果は数十年以上に及ぶ。東京湾周辺の地域構造の再編に貢献するよう、長い将来を見据えて、有効活用を図るための方策を積極的に講じることが重要。
? 有料道路事業として将来世代に過度の負担が生じることのないよう適切な対策実施が重要。





図 交通量?利用者数の計画と実績の比較






図 京葉道路 東関道 交通量と渋滞量の推移

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図 路線バス利用状況


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図 観光入込み客数の推移
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あとがき

 東京湾アクアライン事業事後評価委員会は、東京湾アクアライン事業の事後評価に関して、事業の効果や環境への影響等の項目について、慎重な検討、審議を重ねてきた。
 開通後の時間の経過が十分とはいえないことから、現時点では多岐かつ長期間にわたる道路事業の効果や影響を全て把握し、総合的に評価することは困難であり、引き続き調査、検討を重ねるべき課題も多い。今後の取組みの実施状況も踏まえ、一定期間後改めて評価する必要がある。
 また、同様の大規模事業の今後の調査?計画にあたっては、事業期間及びその効果や影響が長期にわたることもあり、努めて将来の見通しの精度を高めなければならない。一方、国民の意識の多様化、地球規模の環境への関心の高まりや社会経済活動のグローバル化といった地球時代の到来、少子高齢化の加速、高度情報化社会への移行といったこれまでに経験のない時代を迎え、将来の見通しの不確実性は増し、予測の精度にも自ずと限界があることも事実である。こうした現実を踏まえれば、その時々の周りを取り巻く情勢や現象に応じて適宜対策を講じ、当該施設を最大限に活用しその効果を発揮させるべく取組むことが最も重要と考える。有料道路事業の場合は、有利子の借入金を用いるため、取組みの成否が将来世代への過度の負担や社会資本利用の非効率に繋がる可能性もあり、その必要性は特に大きいものといえよう。
 各関係機関においては、本評価内容の主旨を踏まえ適切な対策を講じられることを希望する。
 最後に、この中間報告が、アクアラインの利用の促進?効果の拡大と併せて、公共事業のより効率的な執行、透明性の確保及びアカウンタビリティの向上に資することを願うものである。

平成11年12月          
              東京湾アクアライン事業事後評価委員会